任天堂株主総会2011年

研究している人の中では、立体視に関しては5歳までに脳の中に完成すると言われている。成長過程の個人差も考え、6歳以下に3D映像を見せるには注意が必要と自らでの述べている。それが過大に解釈され、子供の目に悪いとなっている。

立体の奥行きを深くしても疲れない人もいるし逆に疲れる人もいる。そのため3Dボリュームをつけた。ボリュームがあり、疲れにくいように調整できる事を伝えてきているが、まだまだ努力が足りない。

ペアリングコントロールで親によって制限できるよう機能も用意しているが、啓蒙をしているつもりだが、まだまだ努力が足りない。

この2つを広く知らしめることで風評が変わっていくように、また変えていく必要がある。

ニンテンドーDSを使ってDS教室を行っている。先生のところにパソコンが1台、生徒はDSを持ち、パソコンから問題を配信し、生徒が個々のペースで解き、それがパソコンで集計されて個々の生徒の状況が分かる。使っていただいているところには評価していただいている。

教育の現場はゲーム機が入り込むにはハードルが高い。ゲーム機イコール子供の遊び道具、勉強の邪魔と考えている教育関係者もいる。脳トレが出た中で印象を変えた方がいたように、共用と娯楽を組み合わせることで教育現場の方に技術やノウハウの活用の可能性を見出してもらえるようにしたい。

ニンテンドー3DSを使って世界中の美術館に行ったような体験が出来たらどうかと論じている。将来、みなさんにご提案できたら、ご要望に答えられるのかと思っている。

為替差損については売上の8割が海外の売り上げになっており、これらは必ず外貨で入ってくる。差損を無くすだけであれば、入ってすぐに円に換えれば損はない。しかし、為替は変動する。経済の現状や日本の人口減少等を考えると円が未来永劫強いとは考えられない。ヘッジとバランスよく持つのが重要。仕入れはドル建てを増やし、ドルの変動に対する影響を減らした。一方、ユーロについては支払いには使えない。ユーロをどの通貨に換えるかは議論が必要。

Wii U(ウィーユー)に関して、発表会の反響は非常に良かった。会場では拍手や歓声などがあり、アメリカでは感情をストレートに出す人が多いので、反響で手ごたえを感じた。日本でインターネット中継を見た人は会場の興奮は伝わっていないようだが、今までやってきた発表会の中でももっとも強い手ごたえのあった発表の一つだった。

現地で取材を受けたが、取材の冒頭や最後にコングラチュレーションズと、おめでとうございますと半数の人が言ってくれた。

米国外のメディアはE3に記者を派遣しないことが増えた。日本でもそうだが、現地に来て書いている記事と、派遣できずインターネットで集めた情報によって記事を書いている人とでかい離がある。大きな認識の差があるようだ。その差でWii U(ウィーユー)が見たけど売れないのではと思われ、株価が下がった。

うまく伝わらなかったのは大きな反省点。価値が無ければ作り直さなければいけないが、触った人には価値を認めてもらえたので、それを如何に伝えていくかがポイント。WiiやDS発売時に世の中の人が絶賛していたかというと、そうではなかった。新しいものが出る時は賛否両論となる。

株価がこういう局面になれば株主が不満を持たれるのは当然だし、私も5100株持っている株主の一人ですから当然ハッピーではない。なんとかしろと考えてここに来ていることも骨身にしみて分かっているつもり。何をすべきなのかというと、ちゃんとWii U(ウィーユー)の価値をWiiに負けないヒット商品にすることが我々の責任。

打率が高くなるように最善の努力するが人間のやる事なので、任天堂のやることは100%当たるとはいえない。言うとウソになる。みなさんに嘘をつきたくないので、打率を上げるように努力する。過去の実績を見てもらい、経営陣の判断が相対的に一定以上の打率の高い人間がやっているというのを信頼してもらいたい。

外すと覆すのは難しいのと、一度ついたイメージは簡単に変わらないというのは指摘の通り。非常に重要なポイントと思っている。ニンテンドー3DSの反省点は、本来もっともっと今すぐニンテンドー3DSが欲しいと思ってもらうようなソフトを用意して発売していたら、もっと良い状況で推移していたはず。これが不十分で反省するポイント。

娯楽の製品は最初に考えた仕様通りに作れば面白くなるわけでなく、ある程度作る中で手触りを確認して分かる。宮本がちゃぶ台返しと言われて仕様の変更をすることがあるが、スケジュールがどうでもいいわけではなく、一番大事なのは任天堂の商品を遊んで確かに面白かったと感じていただける方が多数派にならないと我々のブランドは一瞬で瓦解する。維持するために必要でやっている。常に切れ目なくヒット商品が出ず、波が出てしまう。今回のニンテンドー3DSはうまくかみ合わなかった。Wii U(ウィーユー)ではそういうことがないように取り組んでいる。

コアゲーマーは保守的との話があったが、今までのコントローラーに慣れているわけで、リモコンを振りなさいとかコントローラーを動かしなさいということに対して、得意であった事を使わずに勝負しなさいと言われるわけで、抵抗があったのではと。Wiiを受け入れた客とそうでない客との差の中に、そういった要因があるのではと分析した。

Wiiが受け入れられなかったポイントは2つ。一つは画質。当時HDの普及率は低かった。画質は劣っていたが、ユーザーインターフェースの刷新などで、新しい方にゲーム機のプレイヤーになっていただいた。もう一つが新しい操作法は今までの得意な操作法を持っている人には歓迎されなかった。Wii U(ウィーユー)にはボタンをいっぱいつけていて、そうした人に楽しんでもらえるようにした。大きく見えるかもしれないが、それほど大きなものではない。大きさに心理的な影響のある人に対しては、合わせて考えなければいけない。

レーティングについては、商品を店頭ではっきり分かるように、パッケージを黒にするなどし、売り場も分けてもらうようにしている。任天堂プラットフォームにも出せるようにしてもらう。

HDのノウハウについては、ゼルダのシーンは任天堂と開発会社とで短い時間で作ったもの。品質的には一定以上認められるものが出来た。遅れを取っているわけではない。

西洋では日本では流行らない戦争系の銃を撃つゲームが1000万売れるゲームがある。これもまたビデオゲーム。これだけではさみしいが、無くなるべきだとも思わない。楽しみたい娯楽を幅広く楽しんでもらうのがWii U(ウィーユー)の目指すところ。そういう商品を得意とする海外の大手のメーカーと話をさせてもらうが、前向きな声を頂いている。

3DSの付加要因について。Wii U(ウィーユー)でビデオ電話が作れるだろう。HPでホームページを閲覧したり、それを大画面に飛ばしてみんなで見たりと、テレビの見方が変わるような要素も提案していく。家族にとってもWii U(ウィーユー)のコントローラーが無関係でない未来を考えている。

携帯電話に関しては研究途上。

ニンテンドー3DSで立体を活かしたゲームは新規に作っていただかないといけない。社内だけでなく社外の方も。昔は任天堂に興味を持ってもらっていなかったので機密保持の点では楽だった。DSやWiiがあったので、次の任天堂は異常なニュースバリューを持ってしまった。情報を機密保持契約で受け取っても言いたくても仕方がないということで漏らしてしまう。Wii U(ウィーユー)もインターネットで部分的にデマと真実が微妙に入り混じった形で発表前に出てしまっていた。発表して明日発売とやりたくても、新ハードではそれが出来ない。発表から発売までソフト商品ではあるのだが、これは自社だけで出来るものであるから。

アジアについて。世界の人口を考えると日本はマイナスだし、アメリカ・ヨーロッパは増えてはいるがアジアほどではない。いわゆる中流階級以上は猛烈に増えていくことを考えると必ず必要。日本やアメリカでやっていた方式をそのまま持っていけば成功するのか、どう取り入れられるのかの議論もあるが、現地の言語にローカライズして現地の文化を理解し、どういうものに価値を認めてもらえるのかを認識するのが必要。

始めるのはタダ、というのはたくさんの人を呼び込むのには非常に有力な手段だが劇薬でもある。同時に起こるのが、ゲームソフトの価値の破壊。対価を払っていただける方が世界で見ると数億人単位でいるからビジネスが成立している。ゲームがタダとなると、非常に大きな問題。

GDCで講演することができたので基調講演をしたが、ソフト開発者はますます価値を高く維持することを意識しないと低いものに簡単に引きずりおろされていくのではないか、そこに注意すべきと話した。なぜか報道が歪んでしまい、任天堂はソーシャルゲームがけしからんと言ったとか、無料ゲームを批判したとか、そんなような文脈で報道されてしまい。ホームページに来ていただければしゃべっていただいたものが書いてあるのだが、残念ながら歪めて報道する人たちに対して我々は勝てないでいる。

看板になるプレミアム価値のある商品は、今のような価値でお客に認めてもらう努力を続けるべきだと考えている。私や宮本が全身全霊をかけて実現していく。

ニンテンドー3DSではeショップや、ニンテンドー3DSでもWii U(ウィーユー)でもつくと思うが、新しいものをお試しいただくような、ソフトをインターネット経由で送り、楽しければお金を払ってもらうような未知の物への出会いを作っていく。

それが自然だと思ったらそうするが、ニンテンドー3DSがないと楽しめないというものになると、両方買えというのか、と感じてしまうお客さまも出てくる。

ニンテンドーゲームキューブとゲームボーイアドバンスを連動させるコネクティビティを10年前に提案して、一定の手ごたえのある遊びは出来たが、敷居の高いものはなかなかお客に広がっていかない。

お客に不自然に両方買わせるつもりかと思われないように展開していきたい。

3Dには質の高いものと低いものとでバラけている。魅力的な立体視を求めて買われるが、任天堂も開発の序盤で苦労した。ソフトメーカーへのサポートが出来るのであれば積極的にすることが、ニンテンドー3DSのお客の満足度を高め、勢いを得るために良いかと思う。

スマートフォンを持っている人でもニンテンドー3DSを持っていただけるように努力したい。

自社のソフトを切れ目なく作れるようにすること、他社の協力をどう仰ぐかというのがポイント。

ニンテンドーDSやWiiは最初からソフトメーカーに高い評価得られなかった。

ニンテンドーDSもWiiも序盤は任天堂ソフト中心でハードの普及が進んだ。ニンテンドーDSの時は売れてきたから乗ろうという時に、早い段階でヒット作が出た。それにより、ビジネスが出来ると確信し、各社のいい開発チームがニンテンドーDSに向けて開発をしてくれた。

Wiiに関しては、海外では事情が異なるが日本で極端に起こったこととして、ニンテンドーDSと同じく時間が解決すると思っていたが、そうならず、ソフトメーカーは期待ほどうれなかった。そのころPSPで「モンスターハンター」がヒットし、そのソフト1本でプラットフォームの勢いが変わった時期があった。Wiiで作ろうと思っていたソフトメーカーがそちらに動いてしまった。

プラットフォームの序盤に商売できるプラットフォームと思っていただくのが大切。取組として、早い段階で情報をソフトメーカーに出し、協力体制を築き、ソフトを共同で作ったり進めている。具体的なタイトルは申し上げられない。

『こういう事情ですので、この質問のこの部分に関してだけは後日ホームページに掲載すると申し上げた質疑応答から割愛させていただこうと思っています』