今後のゲーム業界展望Part2 ソニー編

まこなこ10周年企画として行っている今後のゲーム業界展望の第2弾。

続いて、みんな大好きソニーのお話ですね。

今後のソニーはどうなるのでしょうか？

もう次世代機では存在感が無くなるのではないか、と。

そんな酷いことを...。

まずは、ソニーが今後のゲーム業界で何をしていこうとしているのかを取り上げる。

何か違ったことをするのですか？

今後、ソニーはゲーム業界でソフトビジネスではなく、ソフトプラットフォームビジネスを行おうとしている。これはソニーの2012年度第2四半期の説明会の話を聞いた限りでは、そのように判断した。

すでに自社が抱えていたソフト制作会社をたたんでいるという話をしていることから、ソフト重視よりかはハード面、そして会員数獲得によって他のソフトの販売等の仲介を行う中間マージンでの利益を出していこうと考えているのだろう。

コンテンツ配信サービスという言い方があるが、あえてゲーム業界で一般的だったハードのプラットフォームビジネスとの対比として、ソフトプラットフォームと言っておく。

もちろん、全てのゲームソフトが自社から出ないというわけではないが。しかし、それでは他のスマホやタブレット端末、そしてなによりも任天堂やマイクロソフトが発売するであろう次世代ゲーム機には到底及ばない。

そんな...。

まず、現状認識をしておこう。ソニーはゲーム業界は最下位である。

いまさら強調しないでください...。

しかし、3位でもある。良くも無いが、悪くもない順位だ。だが、もしハード販売ビジネスやソフトプラットフォームでのみ行くのであれば、3位にすらなれないだろう。

どうしてそう言えるのですか？

自社ではソフトを作らずハードを積極的に売っていきますと言っている会社のハードに、どのソフトメーカーがソフトを出すのか。旗を振らずして付いてこいと言って、誰がその方向に進むのか。ソフトメーカーがソニー製品に注力する必然性が皆無だ。

ソニー自身はハードやソフトプラットフォームでどうやって利益を出していくつもりなのでしょうか？

ソニーとしてはハードの販売と、ハードの中で公開する仕組み、ここでは先程からソフトプラットフォームと言っているけど、それによる中間マージンの取得。考え方としてはappleのiTunes Storeのような配信サービスだが、それだけでなく、他の端末でも利用できる総合的な仕組みも含めたものと捉えたい。それにより中間マージンを得ていく。

もちろん、まだディスク形態で販売をするのであれば、製造コストなどでも収益を得られるかもしれない。

つまり、十分やっていけるということですね。

しかし、ハードは価格競争に陥るため利益は出せず、中間マージンもソニー商品に独自に展開する意味がないので結局は他のハードやプラットフォームの中の一つという扱いでしかソフトメーカーに展開してもらえない。ソニー製品やソニーのソフトプラットフォームで出す意味合いが薄いわけだ。

もし、独自コントローラーなどを付けようものなら、最初から選択肢に入らない可能性すらある。

次世代マイクロソフト機や任天堂機とのマルチプラットフォーム展開の可能性もあるにはあるが、任天堂にはマリオやポケモンなどの自社商品、マイクロソフトにはHaloなどのタイトル以外にKinect絡みのソフトがある。しかし、ソニーには無い。一部のソニーソフトは今後も残るかもしれないが、それによって任天堂やマイクロソフトのソフトに勝てるほどの優位性は無い。

自社ソフトメーカーの解散はこうしたところに影響を与えるそうです。

ソニーとしてのビジネスモデルの主軸と考えているであろうソフトプラットフォームによる中間マージンについてもう少し語っておこう。ソニーのゲーム機のユーザーは質が低いので、このままでは成り立たないという現実もある。

ユーザーの質が低いって...。

ここでいうユーザーの質の低さというのは、決してお気楽な発言をネットで書きこんで、他社製品を貶めることに注力し、自分ではソフトを買わないとか、そういうユーザーと意味ではない。

誰もそんなこと言っていませんが...。

ここでいうユーザーの質の低さというのは、お金を払わないユーザーが多い、ということ。無料だからこそ付いてくるユーザーが多いというのが問題だ。今後、有料化の道を進んでいくにしても、無料無料とうるさく騒いで邪魔になる可能性すらある。

マイクロソフトは年会費を払うような有料会員がいて、お金を払うことを知っているユーザーが多い。

グリーやモバゲーなども無料ユーザーが多いものの、極端なお金の使い方をする人も多く抱えている。しかし、ソニーにはそういった人はいない。無料だからこその数千万レベルのアカウント数でしかなく、それも一人の人間による重複が大量に含まれての数字だ。そして情報漏洩すらする信用力の無さ。

情報漏洩の話はここで絡めなくても...。

他の会社はどうかを少し考えてみよう。ここでは任天堂やマイクロソフト以外のメーカーのお話をする。

appleであれば、価格競争に陥らない独自仕様のハードと、iTunes Storeによる中間マージンの取得。主にハードで利益を上げている。

グリーやモバゲーは圧倒的な課金展開。ソフトプラットフォームで会員数の増加などが顕著なのはいまさら言うまでも無い。

最近話が出ているdocomoは会員数増加と通信料、そして中間マージン。docomoは通信料の方で稼げるため、中間マージンは多くなくても良い。それにより、ソフトメーカーに過度の中間マージンを要求する必要が無いため、ソフトメーカーの支持を得やすい。クレジットカード以外の課金方法が確立されているのも魅力的だ。これらがあったから、iモードが成功したわけだ。今後展開するのが成功するかどうかは不明だが。

こうした点を考慮して改めてソニーを見てみると、価格競争力の無いハードと金払いが不鮮明なユーザー。そして自社ソフトの開発も縮小していることからソフトでも稼げず、その他で得られる利益も無い。

ソニーはゲーム単体で考えればそうした傾向がありますが、ソニーグループとして考えれば音楽事業や映像事業など、幅広いコンテンツを有しています。創業者の一人である盛田昭夫氏も、こうしたものを自社製品で活用することを考慮し、買収してきた経緯があります。この辺りはどうでしょうか？

確かに、創業者の考えは分かる。しかし、音楽や映像作品は独占で展開出来ないという問題も抱えている。音楽CDを買ってもらっても、それはソニー製品以外のCDプレイヤーでも聞くことが出来るし、DVDやブルーレイなどの映像作品も他社の製品で閲覧が可能だ。

1990年代であれば、そうしたコンテンツを自社プラットフォームのみで展開していこうという考えを持っていたのかもしれないが、現実はそれが出来ない。

そうしようものなら、結局は音楽や映像作品の売れ行きが減るだけで、ソニーグループ全体の利益として果たしてプラスになるのかという疑問もある。コンテンツなんて視聴閲覧してもらわなければ、縮小するだけだから。先に続かない。

そういえば、先日、iTunes Storeにソニーグループのソニーミュージックエンタテインメントの邦楽楽曲が提供されるという話もありました。この辺りの動向は、独自展開から広く開放への方向転換と見て取れます。

これがまさに、音楽や映像が特定の機器だけでなく、幅広く提供されるべきという流れの現れだ。今までソニーグループとしては自社の製品であったり配信システムでのみ提供していたものの、その姿勢を変えざるを得ない状態にまでなった。

しかし、ゲームだけは違うんだよね。

なぜ、ゲームだけは違うんですか？

ゲームだけは自社のプラットフォームだけで展開できる、独自性を持ちうるコンテンツだ。任天堂がマリオやポケモンなどを自社ゲーム機で独占しているように、マイクロソフトがHaloなどを独占しているように、ゲームソフトのみが独占利用を許されているといっていい。

そうした優位性を自らで排除する方向で動いている以上、もうソニーグループとして他の製品に勝てるものが無いということだ。そうなれば、ソニー製品を買う必要性は無い。

つまり、どういうことでしょう？

最初に言ったように、ソニーは次世代ゲーム機では存在感が乏しくなる、ということだ。

そんなことは無いと思いますが...。

今までのゲーム業界を考えれば分かるだろう。

今までのゲーム業界ですか？

セガのドリームキャストを思い出してほしい。あの例を見て、なおソニーが一定以上のボリュームで自社の利益を上げつつゲーム業界で存在し続けられるとは到底思えん。

利益を出さずに進めていけば結局はドリームキャストの二の舞となる。かといって、規模縮小でやっていこうにも、任天堂やマイクロソフトだけでなく、スマホやタブレット端末による各種サービスにも及ばない。

目先の本体販売台数だけみてPS3は好調だ、と、のんきにネットで言っている人も見受けられるが、ハードで満足に利益を上げられず、また、自社のソフトが売れているわけでもないから他社のソフト生産による微々たる利益しか得られない。なによりも、PS2時代までに得てきた利益を吐き出して展開しているPS3が、微々たる利益しか出せず、さらに先の機器で満足のいくものを出せるわけがない。

直近に出てきたのがPS Vitaであることを考えれば、次に何が出るかなんてわかるだろうに。

確かにPS Vitaの現状は好ましくありませんが、まだ可能性が...。

単に1ユーザーの目線で、ソニー製品が好きだ、PS3が好きだ、というのは構わないし、それはそれでよいだろう。そうした考えからPS Vitaなどに期待するという考えも分かる。自分が買ったゲーム機であれば、その機器でソフトも出てもらいたいからね。

しかも、会社が大赤字で販売しているような商品ということは、それだけユーザーは得しているという見方もできるし。

しかし、ゲーム業界全体として考えた場合、ソニーの行く末は今述べたような未来が待っていると言わざるをえない。

そうならないためにはどうすればいいのでしょうか？

次世代機を諦め、現行のPS3で終わらせるのが一番良いかと。このPS3で何とか利益を出して終わるのが、会社としてはベストだ。

仮に次世代機を出すにしても、余計なことはせずにPS3にメモリの増設などのプラスアルファの追加に留めるとか。そうすれば、すでにソフトの開発コストも落ち着いている中、ソフトメーカーもソフトを開発しやすいし、ノウハウも生かし続けることが出来る。今のゲーム機は、ゲームをするだけであれば十分過ぎる性能があるし、無理に次世代機だ、ということで無謀な性能アップをして、生産コストを増し、売れないゲーム機を世に出し、自らの首を絞めるような、そんなことをしなくてもよいのでは。

これが出来るのであれば、まだソニーはあと数年間はゲーム市場で生き残ることができる。

しかし、無駄に性能アップを図った互換性も無い新しい次世代機を出すとなると...。未来そのものが無い。

ちなみに、ここではゲーム面での話を中心にしたけど、当然音楽や映像なども絡めて展開してくるだろう。ただ、先に述べたように音楽や映像は他の機器でも視聴閲覧できるため、優位性は無い。仮にグループ全体で利益が上がったとしても、ゲーム機としてのソニーの役割は終わる。

以上が、今後のゲーム業界を見た時のソニーだ。