任天堂 株主総会 2018年 君島達己の退任、新社長の古川俊太郎のあいさつ
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任天堂の株主総会に行ってきたので取り上げよう。
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君島社長体制になって3回目です。ですが、今回で君島社長は退任されます。
6月28日、京都の任天堂の本社開発棟7階で株主総会は行われています。
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では、詳細をどうぞ。
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開始の時点で700人近くはいたように感じる。
去年は900人くらいと見積もったので、少しは減っているけど、それでも多い印象。
昔は400人程度だったのになぜなのか。
よそが株主総会のお土産を辞めていたりするので、その流れで任天堂にお土産目当ての人が来ているのだろうか。
天気は雨もなくといった去年と変わらずの状況だったので、天候等の違いはない。
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去年の状況は2017年6月29日『任天堂 株主総会 2017年』をご覧ください。
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10時スタートで10時7分から10分間、ビデオによる業績報告。
その後、議案の説明後に10時22分から質疑応答となった。
主に君島社長が答えているが、他にも宮本茂氏やその他の取締役も回答している。
次期社長予定の古川俊太郎氏は無回答だった。
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株主「岩田前社長や、君島社長がエグゼクティブプロデューサーとしてかかわったタイトルが知りたい。
次の経緯を担う方は任天堂が大きくなってから入社した方が多いが、そうした人が率いる任天堂は今までと違うものをきた期待したい。継続的、長期的な成長、事業の安定、利益の極大化など。娯楽のコングロマリットを目指してはどうか。」
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君島「任天堂の歴史は来年で130年になる。ソフト、ハードのビジネスは30数年。それまでにもいろいろなものを展開してきた。
任天堂は常に娯楽のビジネスを追及しながらいろいろなことを追及してきた。
今後もソフトを中心としたソフトハードのビジネスを発展させ、娯楽ビジネスをさらに追及していきたいと思っている。
これにより、長期的な成長、企業の安定、利益の極大化に我々も目指していけるのではないか。」
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株主「株価が急激に下がっているが案は無いのか。7万円の時も何もしなかったが、今回も何もしないのか。」
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君島「株価については全体の株式市場、個別の需給、期待等で市場で決まっていく。
株価は我々の事業への期待、取り組みをすることで企業価値を拡大していく中で、それに対して評価していただくものと思っている。事業そのものをどのようにより明らかに、どんなことをしていくのかをご覧いただくことにより、進む方向を評価いただき、市場でも評価される。今月の中ごろにロサンゼルスでE3ショーを展開してきた。ビデオを用意してある。その後で参加した宮本フェローからもコメントしてもらう。」
ビデオ1分程度。
高橋「E3は6万9千人の来場者数。任天堂は大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL、ポケットマスターを中心に展示した。スマブラは事前に予約対応し、混乱なく、最終日まで楽しんでもらった。
ソフトメーカーはフォートナイトが発表され、海外で人気のあるソフト。
セキュリティが強化され、初日に入場までに時間がかかったが、2日目3日目は解消された。
前日から初日にスプラトゥーン2とスマッシュブラザーズの対戦イベントを行った。会場は熱気で熱いファンの方に支えられていることが実感できた。
間もなく遊んでもらえるソフトを楽しんでもらえた。」
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株主「2019年3月期にハード2000万台、ソフト1億本を掲げている。今現在の状況を。第1クオーターのスイッチの販売状況。新聞やネットでは株価が落ちたのはニンテンドーラボが売り上げが調子が悪いのでは、ゲームショーが期待外れで下がったと言われている。今現在のニンテンドーラボの状況は。」
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君島「前期の実績を踏まえて、ハード2000万台、ソフト1億本に向けてチャレンジしていきたい。やさしいチャレンジではない。
今年のソフトのラインナップはお客様に受け入れていただけるタイトルが後半に集中している。6月に発売のマリオテニスは良い感じに売れている。
ニンテンドーラボの状況は、任天堂が新しい試みをしたということで評価をいただいている。今まで販売してきたソフトタイトルと異なり、お客様に届くための販売のルートが異なっている。
お客様の子供さんが多く買っていただくだろうと思っているが、その子供さんに買ってもらうためには何かしらの買うための理由が親には必要となる。欲しい、ということですぐに買ってもらえるというわけではない。夏休み、クリスマスとか、理由が必要じゃないかと思っている。今はラボをどういうものかと親御さんも含めて体験していくことに注力している。
売れ方は今までのゲームソフトと異なり、時間がかかる。
ロサンゼルスのショーは、来場者数は前年に増して増えているし、熱気は現場にいたものは感じている。」
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株主「フォートナイトについて。PSのアカウントで遊んだ後ではNintendo Switchのアカウントでは連携できない。マインクラフトでは任天堂とマイクロソフトのtwitterが交流したり、クロスプレイをアピールしている。任天堂とソフトメーカーとのかかわりはどうなっているのか。マルチタイトルへの取り組み。岩田社長が以前、プラットフォーム同士の綱引きのような争いはしないと言っていたが、任天堂はそのポリシーを継続していくのか。」
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君島「フォートナイトは自社のタイトルではないので、コメントを控えさせていただく。プレイステーションと他社とのクロスプレイもプレイステーションさんの話のことなのでここでは控える。マイクロソフトも他社さんのタイトル。」
田中「メーカーと相談して決めていく。できる出来ないがあるが、ご協力させていただいている。」
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株主「マイニングやiphoneなどが活発で物が足りないとか値段が上がったとか悲鳴が上がっている。Nintendo Switchを作り始めた時と比べてフラッシュメモリとかの需給が厳しくなっている。これによって、Nintendo Switchの生産やソフトパッケージへの影響などがあるのか無いのか聞きたい。」
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君島「2000万台の計画をしているので、それに対する量の確保はもちろんしていかないといけない。話し合っていて、量的な確保ができないことはない。
価格については、変動しているが、メーカーと話し合いをしているので、大きく変動するようなことを避けるようにしている。
大量の半導体を使っていくので、複数の企業と交渉することで有利な立場で提供してもらいたいと思っている。」
進士「昨年はすごく厳しかった。調達しにくい環境にあった。そうした環境ではあったが、Nintendo Switchの勢い、思いを多くの取引先と共有することで協力いただけた。数年前から厳しい状況があった。今年も厳しい状況、来年も続くんだろうと思っているが、しっかりと対話を続け、理解していただいた上でご協力いただき、コストも期待に沿う形で頑張っていただきたい。生産台数は何とかなると思っています。」
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株主「ゲーム人口の拡大にあたり、時雨殿などの施設を展開していたが、百人一首等、日本の伝統文化を活用していく予定はないのか。」
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君島「ご意見として承る。花札やトランプも今も生産している。活用できることがあればしていきたいが、具体的なところはもっていない。参考にさせていただく。」
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株主「USJについて。どのような構想でされるのか。アトラクションで楽しんだ人は、ゲームソフトを買わなくなるのではないか。」
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君島「任天堂IPに触れていただくことが増える。ソフトハード一体型のビデオゲームビジネスに来ていただける一つの施策として考えている。」
宮本「USJで発表したことから、USJのイベントと誤解されている節もあるが、オリンピックまでにUSJでスーパーニンテンドウワールドを展開し、その後、ハリウッドなどでも世界規模で展開する。
一連の事業は任天堂らしさという意味では幅広い娯楽へ提案を続けていきたい。新しい価値を生むのが任天堂の社命だと思っている。コングロマリット的な利益追求型の企業として展開はないのかという質問もあったが、結果がそういう利益につながればいいが、資金を使って事業を拡大するよりかは新しい価値を生んでいけるかチャレンジしていきたい。
ユニバーサルパークリゾートとの提携はライセンス。ほかにもIPを活用した展開もしていくのでご期待ください。
スーパーマリオを遊んだ世代のお父さんお母さんがお子さんとラボを楽しんでもらっている。そうした人達がグローバルにいる。実際にパークに行ってもらって任天堂のキャラクターに接する。本格的に作りこんだ任天堂の世界を体で体験できる世界を作っている。日常に感じて思い出してもらえることにより、ゲーム人口増加の効果があると思っているのでご期待ください。」
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株主「日本は人口減になっているが、ゲーム人口も減少していくのでは。インディゲームが話題になっている。どう戦略的に取り込まれるのか。」
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君島「任天堂の強みは世界に通じるソフトを自社で作成できること。自社で面白いゲームを世界に展開していきたい。
Nintendo Switchが中心で世界に展開している中で、遊んでいただけるソフトをたくさん作っていただける方が増えることは大切なこと。
インディと呼ばれる方は小さな規模で作られているが、将来さらにゲームを作っていただけるような方が出てくることはいいこと。
Nintendo Switchは開発がしやすく、手続きが簡略、スピーディにできる環境を作っていくのが大事で、取り組みをしている。結果として、欧米を中心に、ゲームを作っていただき、Nintendo Switchの上で、多くの方が遊んでいただいている。」
高橋「Nintendo Switchを開発するときに、ソフトを作りやすい環境を作ろうとした。それが実った。ユーザーがソフトをたくさん選べるような状況ができた。」
田中「インディーズへの取り組みは5年以上、WiiUの時代からスタートしている。WiiUはハードそのものが普及しなかったこともあり、WiiU向けにタイトルが出てきたことはそう多くなかったが。
Nintendo Switchに関しては非常に大きな数の開発会社が参入いただいてる。
開発環境を整備し、Unityという開発ミドルウェアに対応し、イベントで働きかけをして、インディーズに向けたイベントでブースを持って紹介をしつつ、Nintendo Switchでやっていただくように働きがけをした。1000タイトル出ていて、週に20~30タイトル出ている。グローバルでミリオン達成しているものもある。」
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株主「オンラインサービスの有料化について、ユーザー数の減少などあるのかどうか、今やるポイントは。」
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君島「有料にするからには、より充実したものを提供したい。」
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株主「E3での映像を毎年見せているが、株主が体験できないのはなぜか。株主総会の後に体験会をやってはどうか。」
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君島「ご意見として承っておきます。」
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株主「スマホのガチャの話。スマホでの収益を上げる方法について。ガチャやらないと儲からないでしょう。道義や倫理的な部分はどう考えているのか。」
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君島「課金形態はゲームの仕組み、面白さ、IP、キャラクターの特性などを考えて、どうすれば最も楽しんでもらえるかを個別に決定していきたい。
ファイアーエムブレムヒーローズはシリーズファンに熱心な、20代から30代に支持されているので、対象年齢を13歳以上にし、深く楽しんでもらえるようにした。
オーブによってキャラクターを得られるようにしている。確率はゲーム内に表示しているし、一定回数やれば必ず強いキャラクターが手に入る仕組みにしている。
極端に高額になる歯止めをしている。
いろいろな狙いがあり、IPを使うことにおり、広く世界中に触ってもらう機会を広げ、それにより、ハードソフト一体型のビジネスに来ていただくこと。スーパーマリオランは世界で2億人がダウンロードしている。金額的に得られる金額は少ないが、お客様が広まることが貴重な大事なアプリ。」
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株主「Nintendo Switchの中国市場の展開は考えているのか。」
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君島「ゲームビジネスは解禁されたが、ネットワークビジネスやソフト、出版の規制は残っている。どのように展開できるか進めていきたい。」
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株主「サウンドトラックについて。itunesに星のカービィのサウンドトラックが配信されたが、過去作の配信予定はあるかどうか。」
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高橋「IPを積極的に活用していくことは考えているし、考えていく。どれもこれもというわけにはいかず、活かせないものもある。」
宮本「キャラクターIPはライセンスで使ってもらう。コンテンツに力を入れている。その中にサウンドがある。マリオオデッセイの時にはitunesでサービスさせていただいたりした。
アニメの展開はILLUMINATIONのプロデューサーと親しくなり、いろいろと話していると任天堂とモノづくりの仕方が似ていた。なので、スーパーマリオのアニメを計画した。コンテンツをもって利用ノウハウを獲得して事業の軸にしていこうとしている。」
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株主「ビックリしたのが、総会が静か。ここまで株価が下がっているのに、異常に感じる。E3で2日間で5000円下げている。ソフトを継続して出すことはできないのか。すべて秋口になっているか、それまでに株価の下落を食い止める方策がないのか。」
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君島「年末商戦にかけて準備をするとともに、それ以外もいろいろと発信をしていく内容がある。タイミングを見てどういうものを届けるプランがあるかは鋭意進めている。」
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株主「ブランディングについて。マリオに関して、東京でマリオのイメージを損なうようなカートが走り回っている。裁判で一審でも負けたし、史上最強の法務部とも言われている任天堂がどうして訴訟に負けたのか、どういう戦略だったのか。」
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君島「裁判は続いているので詳細は話せないが、IPを守るために裁判を行っていく。公道カードの事故の問題もあるので、そういう面からも力を尽くしていきたい。
訴訟で負けたのではないかと言われたが、東京地方裁判所に提起した訴訟は今現在も継続しており、判決は出ていない。登録商標のマリカーに対して特許庁に異議申し立てを行ったが、マリカーの商標を維持するという判断を下されたのが誤解されたネット記事があるのは把握している。」
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株主「オンラインサービスについて。周知ができていないのではないか。」
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高橋「5月に発表したが、近くになったらさらに情報が提供できる。もうしばらくお待ちいただけたらと思います。」
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以上ですね。
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11時55分に質疑応答が終了、11時58分に株主総会が終了。
そして、退任のあいさつと新任社長のあいさつとなった。
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次のような挨拶がありました。
君島「前社長の急逝を受け、社長就任でしたが、多くの方々のご支援により、Nintendo Switchの発売と任天堂のビジネスの勢いが戻り、良いタイミングで新体制に続くことができ、まことにうれしく思っております。」
古川「任天堂を経営する上で忘れてはならないのは、生活必需品を作っているのではなく、娯楽を作っている会社だということ。お客様に面白いと思っていただけなければすぐに忘れ去られてしまう。
時代や環境が変わろうとも、当社ビジネスの本質は変わりませんので、業績が良い時も悪い時も一喜一憂することなく、山内元相談役が大切にされていた失意泰然得意冷然という言葉を胸に、これからも会社を経営していく所存です。
任天堂の良いところを引き継ぎつつ、時代の流れに合わせて変えるべきところを変えてゆく。独創性と柔軟性を両立させながら取り組んでいく。
人々を笑顔にする娯楽を作る会社として世界中のみなさんに楽しんでもらえる製品やサービスを提供してまいります。」
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お土産は次の通り。
- スーパーマリオ タオル
- チョコサンドクッキー ミミッキュだよ
- CSRレポート2018
そろそろタオルはよくない?と思ったりするのだが。結構家に溜まってる。
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あなたの事情は知りませんよ。
で、どうだったのですか、今回の株主総会は?
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新社長の古川俊太郎氏が最後のあいさつ以外、話す機会が無かったのが残念。
最後の新任の挨拶時、真下にあるノートパソコンを見ながらしゃべているのだが、その見る回数がやたらと多くて途切れ途切れの話し方になっていたのがちょっとおかしかった。
まあ、これは多少は仕方ないのだが、さすがに見る回数が多すぎた。
それだけ緊張していたのかもしれないが。
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他にはどうでしたか?
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株主の質問も一部を除いてよかったのではなかろうか。
会社側の回答がマイクから離れてしゃべっていたりすることが多かったので、聞き取りにくい場面も多かったけど。
その点、宮本茂氏はインタビュー慣れ等もあるからか、声の大きさは聞き取りやすかった。
最初のE3の話の後に宮本フェローに回答してもらう、と議長が言っていたにも関わらず、話さなかったのは笑ったけど。
余計な発言をしないようにという考えなのか、若い世代に語らせようという計らいなのかはわからんけど。
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株主側の質問はどうだったでしょうか?
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株主総会で体験会を開いたらどうか、という意見以外は軒並みいいんじゃない?
あとはエグゼクティブプロデューサーとして関わった作品は、とかどうでもいいのも論外だけど。
終わった後にリアルタイム検索見てたけど、一部で株価について触れるのがおかしい、という発言を見たけど、少なくとも今回の二人の発言はおかしくない。
もしかしたら、元となるtwitter上の発言が曲解していたのかもしれないが、そこまで調べきれていないので何とも。
まあ、株主総会が静かだったのも、直近では大きく下げたけど、数年単位で見れば上がっているのだし、去年と比べても同じ程度だしね。
こんなところかな。
できれば新社長にもっと話す機会を与えてほしかったというのが正直なところ。どういう人が今後経営を担っていくのかお披露目する意味でもね。
とはいえ、現社長も今回で最後だし、君島氏の発言が多くというのも悪くない。
全体の回答内容を見ると、無難な回答が目立っている。
今後、もしかしたら以前のように新たな気付き等を株主総会で得られないのかも、という不安はある。
良くも悪くも岩田社長が話過ぎた反動なのだが、宮本茂氏がいなくなった後は、普通の会社のようにになりそうで怖い。
と、いうようなことで任天堂の株主総会2018年を終える。