ニーアの齊藤陽介氏、モンハンワールドの辻本良三氏、仁王の安田文彦氏の世界で売るための秘策とは、東京ゲームショウ講演より
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東京ゲームショウ2018が開催されたけど、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
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いかがも何もないですが・・・。
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どうでしたか、何かゲームで注目がありましたか?
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なんもない・・・。
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・・・・・・。
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軒並み、事前に発表されてしまっているし。
と、いうことで、今回は初日に行われた講演を取り上げようと思う。
講演は基調講演のe-sportsに関してと、日本のメーカーが海外で成功するには、というような内容の2つあった。
基調講演はアレだったので、先に2つ目を取り上げようと思う。
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アレって・・・。
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いろいろと問題が多かったのだよ。
そのあたりはまた後日、他のe-sports絡みの講演とセットで取り上げる予定。
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もう一つは「日本発グローバル・ヒットタイトルに学ぶ、国産ゲームが世界で勝つ方法 いまどきの海外向けマーケティング、開発、プロモーションの戦略とは?」となっています。
登壇者は「NieR:Automata」のプロデューサーの齊藤陽介氏、「モンスターハンターワールド」のプロデューサーの辻本良三氏、「仁王」のディレクターの安田文彦氏のお三方です。
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表題が胡散臭い情報商材のようになっているのが気になるが・・・。
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そんな話はいいので、内容を伝えてくださいよ。
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先に聞いていて感じた結論だけ言っておこう。
一定以上の能力のある人が当たり前のことを当たり前にやり、時間と予算をかけて実行していけば、一定の結果は出る、ということ。
その一定の結果以降は偶然性も必要となるが、少なくとも先に述べたことをやること前提でないと、その先は無い。
そうした話をいろいろな例を交えて各社の人間が述べていたように感じる。
日本のメーカーは、なぜか当たり前のことをせずに海外でも売れると思っていたところもあるから。
別にバンダイナムコの名前を出すわけじゃないけど。
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出しているじゃないですか・・・。
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ああ、だからこの登壇者にバンダイナムコの人間はいないのか。
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一時期は海外で売っていくために何本もソフトの発売をしましたが、その結果によってゲーム部門が大赤字になった過去がありましたね。
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さっそく、大まかな内容を取り上げていこう。
まず、それぞれのタイトルに対して関係者がスライドを交えて説明をしていた。
最初にカプコンの「モンスターハンターワールド」について。
ユーザーの本能的な感覚は全世界同じ、という考えを示し、その後、過去のモンスターハンターシリーズの売れ行きを日本と海外の比率で取り上げていた。
過去は日本が86%だったのが、徐々に上がってきて70%まで日本の比率が下がり、海外が増していった。
そして「モンスターハンターワールド」では1000万本を売れただけでなく、海外比率が71%になったとのこと。逆に日本は29%となっているので、日本では290万本以上は売れているということだろう。
正直な話、多少ミスリードを誘うような話でもあり、途中の日本で70%の比率になったというのは、単に日本での売れ行きが落ちてきたから、という見方もできるし、海外では任天堂が販売協力したから売れた、というのもあるしで、必ずしも海外の取り組みによって比率が変化した、とは言い難いような気がした。
とはいえ、最終的に直近の「モンスターハンターワールド」では圧倒的に海外で売れている他、日本でも300万本前後は売れているのだから、現時点では海外比率が高いことは事実だ。
そうしていく過程には、過去作の問題点を洗い出して次回作に活かすなどをした他、据え置き機でやりたいというユーザー側の要望なども踏まえて決定をしていったそうな。
また、技術も最新の技術を用いるなど、世界で勝負するための施策も取ったとのこと。
この他にも、ベータテストなどを事前に配信し、ユーザーからの意見も取り入れつつ、改善もしたとのこと。
そうした中で、人、環境、お金の面での対応も行い、また、ユーザーに対して伝えることを意識もしていき。
などなど、いろいろと行いつつ発売し、結果として1000万本以上売れたそうな。
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次はスクウェアエニックスの「NieR:Automata」ですね。
300万本売れた他、音楽も20万枚以上、書籍も20万部以上売れたと発表されました。
プロデューサーの齊藤陽介さんは「NieR:Automata」で世界的に売れたソフトを手掛けた方としても有名ですが、日本では「ドラゴンクエスト10」「ドラゴンクエスト11」のプロデューサーとしても有名ですね。DQ10ではキャラクター名の「よーすぴ」の愛称でも知られています。
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「NieR:Automata」は、前作に当たる「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」の反省点を改善していくことを主に行ったとのこと。
前作の及第点として絵の面でのキャラクターやアクションゲームの完成度を挙げており、逆に評価された点は世界観や物語、キャラクター、そして音楽。
キャラクターは吉田明彦氏を起用し、ゲーム開発はアクションゲームに定評のあるプラチナゲームズに委託し、問題の解決を図り。
これにより、問題点を減らし、軒並み合格点に上げることに尽力した。何か一つが秀でたからではなく、全体のバランスが取れた結果の成功と述べていた。
プロモーション面では開発者を前面に出した告知と体験版のリリース。
発売の3ヶ月前に体験版をリリースし、高評価を得たことが販売に繋がったのでは、とのこと。
この体験版リリース時期は、海外からは人気タイトルが多く出てくる年末に出すのはプレイされない可能性があるため否定的だったが、多くの人が休みの取れるタイミングは年末しかないことから、年末に公開。それもよかったのではと述べていた。
効果があったプロモーションとして、ゲーム実況の配信制限撤廃やオフィシャルでネタバレ座談会を行って、ネタバレをしていい雰囲気を作り、遊んだ人が情報を拡散することを模索し。
余談だがゲーム実況に関しては「賛否両論あるかもしれませんが、私の中ではゲーム実況は重要なプロモーションだと思っておりまして、ゲーム実況を見た結果、満足する方もいるとは思うんですけれども、見た結果、面白そうだからやってみようという方もいらっしゃいましたし」と述べていた。
その他いろいろな施策はしたものの、では、これと同じことをすれば売れるのかといわれると必ずしもそうではないという結論も述べており。
だが、なぜかそうした話の中で、開発のテンションをキープするための方法を語りだし、その一つに現場を楽しくすべき、という見解を示した。
この現場を楽しく、というのは、後々でも何度も述べていたので、今回のテーマの一つの開発はどうすればいいのか、ということに対する一つの考えなのだろう。
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続いてコーエーテクモの「仁王」ですね。
10年以上前に発表されて以来、音沙汰がなく、それでも発売されてからは海外を中心に売れ、200万本を突破したタイトルになりました。
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「仁王」の話は、体験版を出してユーザーの意見を得て、それを開発に活かした、という話をしている。
アンケート結果では、体験版のバージョンを重ねるごとに評価が上がっていっているというデータも。
比較的手短に話を終えたので、大まかにはこれくらい。
ちなみに、コーエーの創業者のシブサワコウ氏と妻も最前列で観客として座っていた。
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それぞれのタイトルに対するスライドと講演は以上ですね。
続いてパネルディスカッションです。
3名と司会の合計4名でのパネルディスカッションです。
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事前にいろいろなアンケートを海外で行って、日本のゲームはどういう状況に置かれているのかを司会進行から話があった。
どういったメーカーを知っているのかとか、プレイしているのか、とか。
なぜか、バンダイナムコが任天堂よりプレイしているという結果になっていてアレだったけど。
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続いて、今回の3つのタイトルについての個別のアンケートですね。
さまざまな項目に対してどういう評価をしたのかを発表していました。
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「NieR:Automata」が圧倒的にさまざまな項目で評価が高く、「モンスターハンターワールド」や「仁王」は波が激しい印象。
「モンスターハンターワールド」はキャラクターやストーリーなどが弱いとされ、また音楽やインターフェースもそこまで評価されていなかった。
「仁王」はオリジナリティやテクノロジーでの評価が低く、そしてインターフェース等でも低い結果が出ている。
「NieR:Automata」はインターフェース等以外は軒並み高評価。
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インターフェースが軒並み低評価ですね。
そして、最後に日本のゲームの良いところと悪いところのアンケート結果で、悪いところにインターフェースやユーザーフレンドリーの部分が際立って悪いと評価されていました。
他の項目は20%以下にもかかわらず、この項目だけ倍近いの35%以上でした。
そうした結果を元に、登壇者が発言を行っています。
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「ドラゴンクエスト」を例に語っていたのが、「ドラゴンクエスト」はわかりやすくするために最終的な決定までの階層が深いが、それによってわかりやすくしている。一方、海外のゲームだと、ボタンを押せば即座に実行ができるが、それはわかる人にしかわからないような作りになっているという話をしていた。
そのため、海外にはもう一段階層を上げていかなければいけないのかも、とのこと。
「ドラゴンクエスト」も日本と海外とではユーザーインターフェースは変えているとも。
海外はPCで遊ぶ人も多く、ショートカットキー前提の操作に慣れている。コンシューマーゲームのユーザーインターフェースと乖離している。そのため、絶対的にこうすればいいという答えは難しいのかな、と感じた、とも述べていた。
一方、「仁王」の人が言うには、「仁王」はアクションゲームではあるがRPGの要素などもあり、さまざまなパラメータが画面上に出していた。パッと見て並列的に並ぶのがRPGが根強い日本の特徴だが、海外だとFPSが主体だからか過剰な情報はなく、ポインティングすると情報が出るなどしている。考え方が違うのではなかろうか、と。
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他にもいろいろな話があったようですね。
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全部取り上げるのは無理なので、こんなところで。
いろいろな話を聞いた上での結論が、最初に言った「一定以上の能力のある人が当たり前のことを当たり前にやり、時間と予算をかけて実行していけば、一定の結果は出る」に集約されるのではないかと。
能力のない人がやってもダメだろうけど、少なくとも大手ゲーム会社の人間であれば、そこまで無能じゃないだろ、と。
そして金もあるし、時間も与えようと思えば与えられるし、まともにものを作ろうと思えばいくらでも作れるだけの環境はできるのではなかろうか。
だが、今まではそうしたことをしてこなかったが、少なくとも今回取り上げられたタイトルで言えば、その最低限のことはしてきたわけだ。
それで必ずしも数百万本とか1000万本売れるとまでは言わないが、少なくとも利益を出せる水準のものは出せるかと。
あとはその積み重ねで改善を行っていけば、さらなる結果が出る可能性を残し続けることができる。
今回のタイトル群で「仁王」以外は過去作があるものであり、そこからの学びがあり、改善ができたというのもあるし、「仁王」にしても体験版でユーザーからのフィードバックもありつつでの発売でもある。
こうしたことが他のメーカーも、特に中小規模のメーカーが同じようにできるかといえばできないので、そこまで参考になる話でもないのだが、大手であればこのようなタイトルと同じくらいのことは積極的にやってもらいたいと思う次第。
もちろんタイトルや予算、狙いどころなどにもよるんだけどね。
あと、カプコンの人が言っていたように「ユーザーの本能的な感覚は全世界同じ」という発言も頷けるところがある。
任天堂のソフトを例に出すまでもないし、面白ければ売れる可能性はあるんだよね。
いい加減、海外で売るために海外向けソフトを作る、というようなバカげたことを考えずに、面白いものを作る、という大前提を忘れないでもらいたいと思う。
と、いうようなことを講演を聞いて思った。
あと、基調講演と異なり、こちらの講演はテンポもよく、話を聞いていて楽しめ、いろいろと考えることもできたので、感謝しつつ、今回は終えたいと思う。