直近に「ポケットモンスター」関連の個人と思われるサイトから企業系攻略サイトが文章をパクった、という話があったようです。
その話を単に取り上げるのもよいのですが、せっかくなので、ネット上におけるゲーム攻略サイトの大まかな歴史を20年間分、振り返ります。
大きく分けて、個人時代、wiki時代、そして企業時代に分かれると思われます。
そうした中で、実際に個人系攻略サイトを運営してきた身として、語っていきます。
最初に各時代について取り上げ、将来に関しても少し述べていきます。
ゲーム攻略サイト 個人時代
わかりやすいように、日本のネットの存在開始時期をYahooができた1996年とします。
株式市場でのネットバブルやIT革命などが叫ばれたのが2000年前後。
おおむね、この時期辺りには個人のゲーム攻略サイトをよく見かけるようになっています。
当時は個人がサイトを運営するのも一苦労するような時代。
IT革命といわれつつも、今現在のスマホ全盛期の誰でもネットにアクセスできるような状況とは異なり、それなりの規模はあったものの、まだまだ小さなサイトが多数存在するような状況でした。
ゲーム攻略サイトといっても、個人が備忘録程度に書いたものも多く、一つのゲームタイトルについて全部の情報を網羅、というところもほとんどなく。
個人がそれぞれ自分の気になった部分を中心に情報を書いていき、いくつものサイトを見ていくような時代です。
この時代はネット上での収益化する手段は乏しく、稼げたとしても限定的でした。
amazon.co.jpやgoogle adsenseによる収益化すらない時代です。
ちなみに、成果報酬型のamazon.co.jpのアソシエイトプログラムは2001年から、クリック等による収益化のgoogle adsenseは2003年からですが、最初から十分な収益が得られたというわけではありません。
このため、今では金目当てでサイト運営やYouTubeなどの動画でゲーム関連を投稿している人が多いですが、昔は本当に趣味で情報共有目的でやっていた人が大半でした。
個人攻略サイト時代の攻略情報の文章パクリは?
直近に話題になった文章のパクリですが、当時はそうした問題はほとんどなかったと思われます。
する動機がほとんどありませんので。
仮に行ったとしても、問題化するだけですし、そもそも、パクるための文章が存在していない状態です。
数年前に、キュレーションメディア問題として、ゲーム攻略サイトとは別に、企業が他のサイトの文章や写真をパクってくる問題がありましたが、そのパクるべきモノがない時代。
なので、ほとんど全員が自らで書いていたと思われます。
個人的にこの手の問題に遭遇したのが一回あります。
投稿を受け付けて、寄せられた文章をウェブに載せる、ということをやっていたのですが、投稿者が他のサイトをコピーして投稿した、ということがありました。
その後は投稿時に確認ボタンを作るなどして対応したこともあり、長期間、攻略サイトをやってきましたが、同様の指摘はこの1点のみという状況です。
それ以前に、個人的にネタバレが嫌なため、他のサイトを見なかったり、そもそも完璧な攻略情報を載せるつもりもなかったため、自分でプレイして分かったことのみと、寄せられた投稿を合わせた程度の内容で更新を終えていました。
完璧な攻略よりかは、自分もゲームを楽しみつつ、情報も共有して役に立てば、といった具合です。
ゲーム攻略サイト wiki時代
2000年代後半から、「wiki」という仕組みがゲーム攻略サイトでも用いられるようになりました。
今現在で有名なのは「wikipedia (ウィキペディア)」ですが、同じような仕組みがゲーム攻略サイトでも用いられたわけです。
wikiを簡単に立ち上げられるサービスを提供するところもあり、多くのゲームでwikiが立ち上がります。
その特定のゲームのwikiに対して多くの人が情報を更新するわけですが、匿名掲示板とセットになった運営が多く、掲示板で出た情報をwikiに書いたり、wikiに掲示板利用者が書き込んだり。
そうした接点があることから、匿名掲示板の最初の部分に特定のwikiのURLが張られ、まだまだ体力のある匿名掲示板利用者が更新するという流れができていました。
余談ですが、この辺りでスマートフォンも一般化し始めます。「iPhone 3G」は2008年に発売です。
また、匿名掲示板でのゲーム機の機種間の対立煽りやネガティブな情報を中心に載せる2つのブログが有名になりだしたのもこの辺りです。
ネットの一般化と対立煽り等があった関係で、ネット上でのゲーム関連の話がネガティブに傾いていた暗黒時代です。
その後はメーカーが「直接!」情報を発信できる手段が増えたため、正常に戻りつつありますが。
話が逸れたので戻しますが、匿名掲示板との関連がありつつのwikiも、徐々に衰退していきます。
ちなみに、この辺りからネット上で十分な収益を得られる手段が増えてきています。
余談ですが、この段階でもう個人での攻略サイトは無理だな、と察しました。
個人では、集合知には勝てない、と判断し、以後はある程度サイト規模のあったゲームタイトル以外には手を出すことを止めています。
当然、他の人のように、匿名掲示板から情報を得れば、とか、wikiを見ればいい、という手段もできたわけですが、昔から投稿以外は自らで文章を書くことをしていたこともあり、そうしたこと自体に抵抗感があったので、止めるという判断をしています。
ゲーム攻略wikiが衰退した原因
ゲーム攻略wikiの衰退は、主に2つあると思います。
1つは多くのwikiが乱立し、どれを更新すればいいかという問題が生じた点。
匿名掲示板からリンクするにも、どこにすればいいのかわからない状態になりました。
もう一つは、そのwikiで収益化しようとする人が現れた点。
これにより、wikiへの情報記載を止めていった人が出た、というのもあります。誰も、他人の収入のために更新なんてしたくありませんから。
wikiの乱立は、収益化ができるようになったから、との因果関係も当然あります。
また、さらに後々になると、匿名掲示板の高齢化問題が生じます。
高齢化により、もう、ゲーム攻略wikiを元気に更新する気力が無くなっていったのも、影響しているでしょう。
ゲーム攻略サイト 企業時代
wikiが衰退していくと共に、企業によるゲーム攻略サイトの運営が本格化します。
まずはスマホ向けのゲーム。
有名どころでは「パズドラ (パズル&ドラゴンズ)」や「モンスト (モンスターストライク)」。パズドラは2012年公開、モンストは2013年公開です。
YouTube上での動画による情報発信なども込みで、ゲームの攻略が金になると企業に気づかせてしまった一幕でもあります。
この2タイトルの驚異的なユーザーの広がりと、そしてゲーム自体が運用型のサービス提供方法であることから、一つのタイトルで長期間、見てもらえるサイトになったことも、既存のゲームタイトルの攻略サイトとは異なる収益を生んだと思われます。
こうしたゲーム攻略サイトバブルがあったことから、いくつかの会社は上場企業となるまでの収益性を得るまでに発展。
そして、スマホゲームだけに飽き足らず、コンシューマー系にも手を出して今に至ります。
当然のことながら、まともにゲームのプレイをして記事を書くこともなく、一部の集客が見込めるタイトル以外は中途半端に更新を停止。
しかし、検索エンジンでは上位に表示されるため、多くのそのゲームの情報を求める人が中途半端なサイトに誘導され、結局まともに情報を得られなくなり。
また、個人で攻略情報を書こうにも、パクられて終わりで自らの書いたものは見られることもなく、検索でも上位に来ないことから見られず、といった具合に負の連鎖が続いています。
知名度があり、この手のサイト運営側が稼げると思ったタイトルであればそれなりに情報も載りますが、中途半端なタイトルにまで手を出そうとして結局情報を満足に載せないことにより、中規模以下のタイトルの攻略情報が得にくい時代となっています。
文章のパクリは著作権違反?
さて、ここで直近に問題になっている企業による文章のパクリ問題。
一時期話題となった企業によるキュレーションメディア(さまざまなサイトなどから情報を集めてまとめるサイト)でのパクリ問題などと同じようなことがいまだにゲーム界隈で起こっていることになります。
ただ、ゲームの攻略情報は果たして著作権的に問題あるのか、という話になると、まったく問題にならないため、パクられても実はあまり文句を言う法的な後ろ盾はなかったりします。
よほど、詩的な文章でない限りは。
このため、相手企業に指摘をしても無反応ということがあったという話もあるのですが、そうした対応をされておしまいです。
あとは名指しでネット上で訴える、というくらいしかできませんが、それをやったからといって相手に大したダメージを与えることもできません。
なぜなら、多くの人は検索エンジン経由でサイトを訪れるため、パクリかどうかという問題があるかどうかすら知りようがありませんので。
2つのパクリ対策
パクリ対策をするのであれば、今なら2つの手段があります。
一つは、画像等にサイト特有のイラストが入ったバックグラウンドを用いる点。透かしでも構いませんが全体に特有のものを入れるのであれば、バックグラウンド用の画像を用いてその上に表や図解で情報を載せるほうがいいでしょう。
全部の情報を載せると検索エンジンに引っかからないだけですから、あくまでもピンポイントでの活用になりますが。
そうした画像すらパクる企業があったらしいですが、特徴的なイラストなどを用いたバックグラウンドであれば、著作権違反で訴えることも可能です。
あとは、動画でゲーム動画とナレーションで説明をするくらいでしょうか。
ゲーム動画だけだと、それすらパクる人がでそうですが、ナレーション等を自らで入れれば流用されることはないでしょう。
とはいえ、今度はネタバレ問題も出てくるため、ゲームジャンルによっては動画での攻略情報は問題になるかもしれません。
いずれにしろ、気軽にコピーできるからパクられるので、その気軽さを少しでも減らすことをサイト運営者側がする必要があるわけです。
なんでパクられる側がそのようなことをしなければいけないんだ、と憤慨するでしょうが、金目当てで倫理観無くやっている相手に真っ当さを求めることは無理なので、憤慨するだけ時間と気力の無駄です。
ゲーム攻略サイトの将来
最後にゲーム攻略サイトが今後どうなっていくのかを少し語っておきましょう。
規模の大きなタイトルは形はどうあれ、残り続けるので特段心配する必要はありません。
パクリパクられの話は、あくまでもサイト運営者側の問題であり、ユーザー側が意識する必要はありませんので。
逆に、中規模から小規模のタイトルの攻略情報がどこまで提供されるのか。
先に述べたように、企業系は収入が少ないと判断した段階で中途半端でもそこで情報更新を止めてしまいます。
個人も攻略サイトを作らず、企業も放棄するとなると・・・。
攻略情報が得られない規模の小さなタイトルが多く出てくることに。
直近でもインディゲームや海外からの日本語化されていないけれども楽しめそうなタイトルが大量にある中、本来であればここでこそ個人の情報発信が重要になるのですが・・・。
年寄りは体力がなくやらず、若い世代はそもそも攻略サイトを作るということすらわからず。
いろいろとゲーム業界全体としてもったいないと思った次第。
おわりに
恐れた集合知が、企業の収奪によって崩れようとは思いもしなかった。
どうでもいい話ですが、これを書いていたら攻略サイトを作りたくなってしまった。